太古の原生林が広がる屋久島は、洋上のアルプスと形容されるほど数々の高峰がそびえる山岳の島。
9割以上を山地が占める島で、人びとは海岸沿いのわずかな平地で山と海の恵みを受けて暮らしてきました。
黒潮にのって運ばれた暖かく湿った風が山をのぼって山頂の冷えた大気とまじわり、
雨となって絶え間なく島を潤すことから、“月に35日は雨が降る”といわれるほど。
豊富な流水や湧水に恵まれているため、島内の電力は水力発電で賄われています。
厳しい自然に畏敬の念を抱き、共生する島の人びとの暮らしは、
これから私たちが目指すべき循環型社会のあり方を示しています。
屋久島では、豊かな森で多種多様な植物を食べて育った屋久鹿や、
広葉樹の薪で燻され、黴付けと天日干しを繰り返して作られる鯖の本枯れ節など
島ならではの食材に出逢いました。
屋久島とは対照的に平坦な地形の種子島は、農地に恵まれた島です。
私たちは島の南端に位置する宝満神社の御田植祭に立ち会いました。
赤米を伝えたとされる玉依姫を祭る宝満神社は、毎年4月、神田に赤米を植える御田植祭が行われています。
神田に隣接する“御田の森”と呼ばれる場所で祈祷した赤米の苗を田植歌とともに植え、舞を奉納した後、
直会では、赤米の握り飯やお煮しめなどが振る舞われます。
一方、玉依姫の夫、鵜葺草葺不合命を祭る島北端の浦田神社では、昔から白米を栽培してきました。
インドネシアの稲の系統とされる赤米は黒潮と共に南から、白米は大隅半島から伝わったとされ、
古来より、種子島は稲を大事に祭り育ててきた稲作の島だということがわかります。
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