2011年、国際連合食糧農業機関(FAO)により世界農業遺産に認定された「能登の里山里海」。
平地が少なく、主に低山と丘陵地から成る能登半島では、
長い歳月を経て、自然と調和した伝統的な農林漁業が営まれてきました。
日本海に面した急傾斜地に1,004枚の田が幾重にも連なる棚田「白米千枚田」では、
実際に種籾から苗を育てる日本古来の農法「苗代田」による稲作が行われています。
また、珠洲の地に400年以上前から続く「揚げ浜式製塩」は海水を砂の上に撒き、天日で乾燥させた後、
塩分を含んだ砂から抽出した塩水を釜で炊き上げる製塩法で、この地に残る伝統技術です。
一方、加賀百万石の歴史と伝統が生み出したハレの食文化が今なお息づいている加賀地方には、
農耕や漁労の守護神として信仰の対象とされてきた白山を擁し、白山を源流とする
手取川の浸食、堆積によって形成された加賀平野が沿岸部に広がります。
江戸末期から明治初期にかけて七ヶ用水が整備されたことで、加賀平野は、
日本有数の米どころとなり、加賀野菜などの農作物の栽培も盛んに行われるようになりました。
豊かな気候風土のなか、多様な発酵食文化が育まれてきた石川県では、猛毒をもつ河豚の卵巣を糠漬けにし、
発酵の力で数年かけて解毒した珍味をはじめ、さまざまな伝統的発酵食品が郷土の味として食されています。
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